トップページ > 子育ての医学情報 > 2012.11.09

子育ての医学情報

iPS細胞への期待 その2

細胞から身体の部品をつくる

img-medicine-info-20121109-01.jpg  前回もお伝えしたように、山中伸弥教授率いる京都大学の研究グループは、人間や動物の細胞を採取し、そこに数種の遺伝子の因子を導入することで、どんな細胞にも分化できる分化万能性を回復した「iPS細胞」をつくりだすことに成功しました。
 どのような細胞にもなれる能力を秘めているiPS細胞は、医療のさまざまな局面で多大な貢献をしてくれることが期待されています。その中で、もっとも注目されているのは「人間の部品をつくる」という用途です。
 iPS細胞は万能細胞なので、たとえば、心臓に疾患のある患者さんから採取した細胞をiPS化して、心臓の組織になるようなプロセスを踏めば、人工的に心臓の組織をつくれる可能性があります。これを病気の心臓の組織と交換する移植手術をすれば、拒絶反応なしに新しい「部品」を組み込むことができます。これが一般に再生医療と呼ばれる技術です。
 すでに人間の目の網膜の主要組織である「神経網膜」と呼ばれる組織をiPS細胞からつくる技術が日本で開発されており、網膜のトラブルによって失明の危機にある人、あるいは失明してしまった人の視力を回復させる可能性が高まっています。
 現在はまだ単一の細胞の集まりである組織しかできませんが、心臓や腎臓をつくるといったことも理論的には可能です。将来、あなたの皮膚の細胞からあなたの心臓をつくるといったことができるかもしれません。

効果的な医薬品を短時間でつくることが可能に

img-medicine-info-20121109-02.jpg  iPS細胞に期待されるもうひとつの用途は、人間の細胞を量産して、さまざまな研究に活用することです。
 ここでの用途は2つに大別できます。第一に挙げられるのは、新薬の開発です。
 1種類の医薬品を開発するためには、数万種にもおよぶ物質を候補として、マウス、ウサギ、イヌ、サルなどで効果や安全性などをチェックします。数年の時間をかけて、可能性のある物質を絞り込み、その後に臨床治験という人間対象の検証の段階に至ります。しかし、対象となる疾患を持つ患者さんの臓器や組織の細胞を量産して効果や安全性を確認できれば、動物実験のプロセスを大幅に削減しながら、人間の疾患に効く物質を短期間で探し出せます。このアプローチはすでに新薬の開発に活用され始めています。

患者さんの体外で病気のメカニズムを知る

 量産した人間の細胞の活用法として2つめに挙げられるのは、患者さんの細胞からiPS細胞をつくり、それがどのようなプロセスを経て、病気の状態になっていくかを体外で観察するというアプローチです。
 患者さんから細胞を採取して、それをiPS化することで患者さんの体外で疾患モデルをつくり、さまざまな検証をするのです。これによって、難病といわれる疾患の治療法を獲得することが期待されています。
 たとえば、遺伝子に原因があって発症する疾患なら、患者さんの細胞を採取してiPS化し、これを分化させていくと、遺伝子の欠陥によって、やがて細胞のなかに患者さんと同じ問題が生じます。この経緯を観察すれば、患者さんの体外で、体の中で起こっている「病気になるプロセス」を把握できるわけです。こうした検証で得られる情報によって、治療法を発見できる可能性は飛躍的に高まります。

「特注の部品」の作成には莫大な費用が必要

 このように、iPS細胞は果てしなく夢の広がるすさまじい技術ですが、もちろん問題点はあります。
 最大の問題は、iPS細胞による再生医療には高額の経費がかかるという点です。
 iPS細胞による再生医療の場合、すべてが個別対応となります。たとえば、Aさんの治療に使う組織は、Aさんから採取した細胞をiPS細胞にし、それをさらにターゲットとなる部位の細胞に分化・増殖させ、臓器や器官、組織をつくります。今のところ、この作業にどれだけの経費がかかるかは未知数です。
 iPS細胞の作製だけを見ても、現在は研究者の手作業によって行われているので、培養したあと利用可能なiPS細胞を作成するだけで数か月の時間と1000万円以上の経費がかかります。これをさらに目的の組織にするまでの費用は想像を絶する金額になります。
 こうした先端技術においては、さらに技術が進歩することで経費は大きく低減されるのが一般的ですが、経費を低減するには量産化が大きなポイントとなります。ところがiPS細胞は、患者さんに個別に対応しなければならない点が問題となります。Aさんの治療をするためには、AさんのiPS細胞を作成し、これをAさんの疾患に応じて分化・増殖させる必要があるのです。つまりすべてが特注品ということです。
 そこで、iPS細胞による再生医療が利用できるのは、経済力のある一部の資産家だけとなる危険性があります。そして、どんなにすばらしい成果を上げられるとしても、現時点では、日本において健康保険を適用することはかなり難しいと考えられます。
 これは、これから医療が直面せざるを得ない難問です。
 現在は、ノーベル賞祝賀ムードの中で、iPS細胞はいいことづくめの「救世主」であるかのような報道がされていますが、それは認識不足であり、必ずこのような経済的な問題が発生します。私たち一般市民も、この点を頭に入れた上で、iPS細胞の未来を考える必要があります。

記事ナンバー292/2012.11.09より掲載
文・恵志泰成  監修・中原英臣 イラスト・山本正子

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